今年度の抱負
林業技術センター所長 高野了一
この度、新たに情報誌として「富山県林業技術センターだより」を発行することになりました。これまで林業試験場から「吉峰だより」、木材試験場から「木試だより」を発行し、それぞれ林業、木材関係者を中心に配布してきました。しかし、環境問題対策など森林整備と木材利用が一体となった取り組みが求められる今日、林業、木材関係者、行政はもとより広く社会に最新の技術情報を発信し、これをお互い共有していくことが重要と考え、両誌を発展的に解消し、センターだよりとしたものでございます。年2回、センターの研究活動、研究成果を分かりやすくタイムリーにお届けしたいと思っております。
さて、今年度より3ヵ年計画で木材試験場の再整備が始まります。今後、新しく木造住宅の部材・構法開発や家具関連の研究にも取り組むことにしていますが、研究成果は、それが社会に還元され、活用されてこそ意義あるものと考えます。そのためには、ハード面の整備と併せ、試験場と企業等との連携のもと、新技術・新製品の開発から商品化まで協働して取り組む体制を構築することが最も必要と考えています。
日常の研究活動を通して多様な企業等との連携強化を図る努力は勿論必要ですが、その一つに当センターの支援組織である「富山県林業技術センター振興協議会(昭和44年設置)の活用があります。当振興協議会は県内の製材・木材業、工務店、森林組合など70数社が会員となり、機関誌の発行や講演会、木造建築研究会、先進地視察等の活動を行っています。この再整備を契機に、今年度、当振興協議会と協力して会員の拡大や組織の見直し、事業の拡充等を行い、試験場と企業等との交流をより活発化させ、共同研究や技術支援がスムーズに展開できる体制を構築したいと思っています。
また、林業試験場においては、森林の公益的機能を維持増進するための技術開発を通じて地球温暖化防止などの環境問題等に貢献すると同時に、実用化・事業化を目指した研究開発や研究成果の現場技術移転を積極的に進めていくことが必要と考えています。このため、今年度は行政、森林組合等と連携し、全国で初めて品種登録出願を行った無花粉スギ「はるよこい」の大量増殖技術の開発や生活習慣病に予防効果がある県産ヤマブシタケの栽培技術の開発などに積極的に取り組み、林業関係者のビジネスチャンスや新規産地化につなげていきたいと考えています。これら結果についても、本誌で適時紹介していきますので、これからもご愛読いただきますようよろしくお願い申しあげます。