早くこい無花粉スギ「はるよこい」
近年、スギ花粉症が大きな社会問題になっていることから、林業分野では花粉源対策が重要な課題になっています。そんな中、当場では、全国に先駆けて春先になっても全く花粉を飛散しない無花粉スギを開発し、「はるよこい」と命名して2003年12月に品種登録の出願をしました。
このスギは、1992年に富山市内の神社で偶然、発見された無花粉スギ(タテヤマスギの突然変異体)の種から育成した品種で、「花粉が無い」、「初期成長がよい」、「さし木の発根能力が高い」といった特徴を持っています。
外見上は、普通のスギと同じでなんら変わったところはなく雄花も正常に形成されますが、雄花の中を顕微鏡で詳しく観察してみると、花粉の基となる細胞(花粉母細胞)は、作られるものの、途中から花粉粒が肥大していき、最後には全く花粉が無くなってしまいます。
これに対して、雌花の機能は正常で、種子の発芽やその後の苗の成長も問題ありません。 無花粉になる性質(雄性不稔性)の遺伝様式を決定するため、検定交配と呼ばれる交配試験を行いました。その結果、この無花粉になる性質は、一対の劣性遺伝子によって支配されていることが明らかになりました。このことによって、交配の組み合わせ次第で無花粉スギの増殖や品種改良は可能になりました。
「はるよこい」をはじめとする無花粉スギの利用は、スギ花粉軽減の抜本的な対策として期待されています。このことから、林業試験場では、現在、「はるよこい」を挿し木によって増殖しており、平成23年から年間500本程度の生産体制を整え、まずは、公園などに緑化用として普及していく予定です。
また、それと同時に交配によって無花粉スギの品種改良も進め、遺伝的により優れた無花粉スギを作出していく予定です。
(問い合わせ 林業試験場 斎藤 真己)