数値地形解析技術を用いて森林の生産力を推定する
近年のコンピュータ技術の発達と地理情報システムの普及により、数値標高データ(DEM)を用いて、地形を定量的に解析する「数値地形解析」という新たな技術が誕生しました。DEMは位置情報に対応した標高データを格納した一連のデータセットのことで、このDEMから斜面傾斜や斜面方位といった地形特性を算出する手法を数値地形解析といいます。最近、この技術はさらに発達し、地形による水の動き、気温や日射量の変化などを再現するモデルが考案され、様々な分野への適用がはかられています。現在、林業試験場ではこの技術を応用して、県内の林地生産力を推定し、合理的な適地判定を支援するシステムの開発に取り組んでいます。
これまでの研究で、地形解析によって算出した環境因子のうち、土壌水分、気温、標高、日射量、斜面の曲率、斜面方位などがスギ林の生育と密接に関係していることが判明しました。そして、これらの環境因子を用いて、林地生産力を推定するためのモデルを作成したところ、実用的な制度を有することが確認されました。
このモデルを用いて、林地生産力による森林ゾーニングを試みた結果が図1です。青で示された部分は林地生産力が高い地域で、スギ林における地位1等以上相当します。赤で示した部分は、生産力が低い地域で、地位3等以下に相当します。黄色で示した地域はそれらの中間に相当します。
このゾーニングマップを用いることで、現場で簡単に対象となる地域の生産力を推定することができます。さらに、雪害や風害などの気象害の発生状況、林道網などの情報を取り入れることで、より合理的で実用性の高い適地判定が可能となるでしょう。また、広域的な森林計画の立案にも、このような情報は役立つと考えられます。
<問い合わせ>林業試験場 図子光太郎